響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで

大分市美術館
  • 開始日: 2025年04月24日
  • 終了日: 2025年06月22日

展覧会概要

1981年に開館した宮城県美術館は、宮城県や東北地方にゆかりがある作家の作品とともに、ヴァシリー・カンディンスキーやパウル・クレーなど、海外作家の作品も多く所蔵しています。
本展では宮城県美術館のコレクションの中から、高橋由一作品をはじめ、東北ゆかりの萬鉄五郎、松本竣介らの近代洋画、またカンディンスキーやクレーの西洋絵画、さらに「具体美術協会」の作家による戦後美術など選りすぐりの名品を紹介します。穏やかな具象絵画から知覚を揺さぶる刺激的な表現まで、多彩な絵画が響きあう展示空間をお楽しみに。

見どころ

日本の美術 明治期

 宮城県美術館の開館から百年前の1881(明治14)年、高橋由一は山形県下の新道開発の記録画等を描くために東北を訪れました。その際、由一は宮城県からの依頼で、《宮城県庁門前図》や《松島五大堂図》等の宮城県を代表する風景を、油彩画による記録画として制作しました。
 本展ではこの他、由一が油彩画を学んだ、イギリス人の報道画家ワーグマンの作品や、日本初の官立の美術学校で西洋画を学んだ、小山正太郎の作品を展示するともに、宮城県出身で黒田清輝に学んだ画家、渡辺亮輔の作品も展示し、明治期の洋画の展開を紹介します。
高橋由一《宮城県庁門前図》1881年 宮城県美術館蔵

日本の美術 大正期

 1910(明治43)年、美術の動向に大きな影響を及ぼす、二つの象徴的な出来事がありました。一つは文芸誌『白樺』の創刊であり、もう一つは高村光太郎による『スバル』誌上での「緑色の太陽」の発表でした。『白樺』にはセザンヌやゴッホ等の美術が紹介されました。これらを通じて画家たちは、ポスト印象派やキュビスム、未来派、表現主義等の理論やスタイルを貪欲に吸収していきます。萬鉄五郎や岸田劉生等の作品には、これらの新しい動向が見て取れます。芸術表現の拡大と、太陽を緑色に描いてもよいというような、芸術家の自我を開放する思想の広まりを背景に、画家たちは「個」の表現を追求していったのです。
萬鉄五郎《郊外風景》1918年頃 宮城県美術館蔵

日本の美術 昭和期

 昭和期には日本の洋画も成熟し、フォーヴィスムやシュルレアリスム、抽象画など様々な画風が展開され、日本独自の油彩画も追求されました。一方で、戦争や、都市化に伴う社会問題などが、画家たちにも大きな影響を与えました。松本竣介の《画家の像》は戦時下の自画像であり、画家としての覚悟が感じられる、昭和美術の代表作です。
 戦後、美術の概念はさらに多様化し、新たな技法や材料も使われました。1954(昭和29)年に結成された具体美術協会は、天井から垂らした紐にぶら下がり、床に置いたカンヴァスの上を滑るように足で描いた行為の痕跡を作品とした白髪一雄、絵具の物質感や行為の偶然性を極力排除し、自らの手で円を描くことでオリジナリティーを示した吉原治良などの個性的な取組みが試みられました。
松本竣介《画家の像》1941年 宮城県美術館蔵

洲之内コレクション

「一枚の絵を心(しん)から欲しいと思う以上に、その絵についての完全な批評があるだろうか」と語った美術コレクター、洲之内徹。エッセイ「気まぐれ美術館」の書き手としても知られる彼は、画商でありながら気に入った絵を人手に渡すことを嫌って自ら愛蔵することもありました。洲之内が最後まで手放さなかった作品群は「洲之内コレクション」と呼ばれ、現在は宮城県美術館に収蔵されています。
長谷川潾二郎《猫》1966年 洲之内コレクション 宮城県美術館蔵
海老原喜之助《ポアソニエール》1935年 洲之内コレクション 宮城県美術館蔵

カンディンスキー、クレーとドイツの20世紀美術(1)

 ロシア出身のカンディンスキーとスイス出身のクレーは、共に19世紀末に「芸術の都」ミュンヘンに渡りました。
 色や形のもつ「内なる響き」が絵画の本質だと考えたカンディンスキーは、やがて抽象絵画の扉を開きます。1911年末に「青騎士」の発足を主導し、同じ頃にクレーと知り合いました。しかし第一次世界大戦の勃発により帰国を余儀なくされ、「青騎士」の活動は終わりを迎えました。
ヴァシリー・カンディンスキー《「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)》1914年 宮城県美術館蔵

■カンディンスキー、クレーとドイツの20世紀美術(2)

 第一次世界大戦、戦後の恐慌と都市への人口流入、社会的矛盾の顕在化によって、合理主義や近代科学への信仰が崩れ、幻想性や神秘性への希求が高まる中で、クレーの芸術が徐々に評価を高めました。
 1919年にヴァイマールにバウハウスが開校すると、クレーとカンディンスキーはともに指導者として着任。1925年にバウハウスがデッサウに移ると、同じ宿舎で暮らしました。バウハウスはナチスの圧力により1933年に閉校。二人を含む多くの前衛画家の作品が退廃芸術と見なされ、ドイツでの活動が難しくなりました。それでも、カンディンスキーはパリ、クレーはベルンに拠点を移し、晩年も旺盛な制作を続けました。
パウル・クレー《力学値のつりあい》1935年 宮城県美術館蔵

展覧会情報

会場:大分市美術館 企画展示室
会期:5月18日(日)~6月22日(日)
休館日: 5月19日(月)・26日(月)、6月9日(月)・16日(月)
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
主催:大分市美術館、大分合同新聞社、響きあう絵画展大分実行委員会、宮城県美術館、朝日新聞社
後援:NHK大分放送局、OBS大分放送、TOSテレビ大分、OAB大分朝日放送、エフエム大分、J:COM大分ケーブルテレコム、月刊・シティ情報おおいた、NOAS FM、ゆふいんラヂオ局/協力 カトーレック
観覧料:一般1,200(1,000)円、高校生・大学生900(700)円、中学生以下無料
※( )内は前売・20人以上の団体料金※上記観覧料でコレクション展も併せてご覧いただけます
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳提示者とその介護者は無料
※大分市美術館年間パスポートをご利用いただけます
前売券 販売期間:4月18日(金)~5月17日(土)
販売場所:大分市美術館、大分合同新聞社本社受付、同プレスセンター、トキハ会館、ローソン(ローソンチケット Lコード:84367)、セブンイレブン(チケットぴあ Pコード:687-224)

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