磨崖仏を訪ねる

口戸磨崖仏 くちどまがいぶつ 県指定史跡(昭和44年3月22日)

口戸磨崖仏は、霊山(りょうぜん)に向かった木ノ上の台地の南端にあり、丘陵(きゅうりょう)の中腹の凝灰岩の岩肌をくり抜いた石窟の中に彫られています。石窟には三つの(がん)が造られ、各龕の中に一体の像が彫り出されています。

向かって右の龕には左脚を下ろし、右脚を曲げた僧形の像が彫られ、向かって左の龕には、上に切妻屋根をのせた石殿風の屋根の中に55cm角程の小龕を造り、中に一面四()(顔一つに腕四本)で、鳥居を冠につけた天女風の女神形立像が彫られています。四本ある腕の一本は欠けて不明ですが、他の手には三叉戟(さんさげき)、棒の先に財嚢(ざいのう)のようなものをつけたもの、(かぎ)の形をしたものなどを持物としています。

中央龕には、宇佐八幡宮を意味する「小倉山」の三文字が薬研彫(やげんぼ)りされていることから、この石窟は宇佐八幡宮を勧請(かんじょう)したものであることがわかり、これらの三像は、宇佐八幡三神(中央が比売神(ひめがみ)、向かって右が(おう)(じん)天皇(てんのう)、左が神功皇后(じんぐうこうごう))と思われます。

一面四臂の神功皇后像は、民間信仰の神像「青面金剛(しょうめんこんごう)」などと混同した造形のようであることから、この磨崖仏は、民間信仰と混じって次第に神像の形が崩れていった室町時代以降のものであると思われます。

※神仏の分身・分霊を他の地に移して祭ること

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